禅小話

目次
はじめに 1 音  2 槍の位 3 只今に道を求めて歩む人生 4 大文字行 5 気概  6 お地蔵さん  7 後ろ姿   8 息 9 行儀 10 体で考える 11 馬鹿になる 12 終わりに 13 喫茶店のマスターと脚下照顧 14 宝蔵院胤栄 摩利支天石  15 饂飩(うどん)会について 17 大文字般若心経読誦早朝勤行会 18 饂飩(うどん)会について

18 饂飩(うどん)会について
平成20年12月21日
鴻ノ池禅友会会員 一箭順三

臘八接心(ろうはちのせっしん)
 習心館道場で剣道を習っていた私は、鍵田忠三郎道場長のお勧めもあって、昭和47年度習心館道場臘八接心参禅会に初めて参加させていただきました。臘八接心とはお釈迦様が8日間の坐禅修行を経て悟りを開かれた臘月(12月)8日にあやかり、禅寺での参禅修行をいいます。習心館道場においても、毎朝5時半から8日間の臘八接心が実施されていました。この参禅会には平素坐禅修行している者達以外に市民にも呼びかけ、さらに剣道修行の小・中学生も多く参加していました。当時の臘八は、素足で道場の床に立つのも辛いような寒い日が続いていたように思います。この厳しい修行を終えた参禅者や子ども達に、道場長の奥様は毎年最終日修了式のあと、温かい小豆粥などを用意してくださいました。

釜揚げ饂飩
 私も参加者の皆さんと一緒に有り難く頂戴していたのですが、何年か通わせていただくうちに、奥様にばかりご迷惑をおかけしては申し訳ないという気持ちになり、私に食事のお世話をさせてくださいと申し出たわけです。
 こうして昭和53年の臘八接心から典座(てんぞ:禅寺で食事を司る)役を担当をさせていただくこととなりました。子ども達も喜んで食べてもらえ、そして私にも出来る料理ということで、きつねうどんを考えました。しかし、20人前後の参加者一人ずつにうどんを湯がいていては、冷めて伸びてしまいます。そこで「釜揚げ饂飩」を思い付きました。これなら何人分でも一気に湯がき、そして同時にお配りをすることができるのです。

お味噌とつけ汁
 また「つけ汁」の材料として、道場長のお許しを得て鍵田家味噌蔵のお味噌を頂くことにしました。当時、鍵田家では毎年11月19日の地元川上町の恵比須祭り参拝者のために、30基ほどの大釜で3000人分余の豚汁を作り、自宅裏庭で供しておられました。そしてその味噌はすべて自家製を使用しておられたのです。
 このお味噌に醤油・味醂・胡麻を加え味を調えてつけ汁を作り、臘八最終日にお出ししました。以降毎年工夫をし、2-3年後には道場長や西川源内先生からもお褒めを頂くようになり、ようやく自信をもってお出しすることが出来るようになったのです。
 
饂飩会
 一方、奈良市中央武道場での坐禅教室は、昭和52年5月からはじまりました。いつの頃からか、この饂飩を年末納め坐禅会にも供するようになり、鍵田先生がご健在の頃は、この饂飩を「一箭饂飩」と称して年末の楽しみの一つのように仰ってくださいました。
 今ではこの饂飩会は鴻ノ池禅友会主催行事として実施されるようになりました。食材費すべてを同会が負担のうえ、役員皆様による諸準備や設営をいただき、胡麻炒り・胡麻擂り、あと片付け・食器洗いまでお願いしております。さらに、鍵田忠兵衛さんから丼鉢・お椀を、伊藤吉朝さんからガスボンベの提供を得て、お陰様で毎年滞りなく饂飩会が開催出来ているのです。

手打ち饂飩
 つけ汁や出汁の作り方には毎年少しずつ工夫を加え、グレードアップを図っております。また、饂飩は冷凍うどんを使用してまいりましたが、自身の手打ちを食べて頂きたく何度か自宅で試み、平成16年からは禅友山野俊之・米村毅さんに徹夜のご助力を得て、ようやく皆さんにお出しできるようになりました。なにしろ90玉分(小麦粉:9s)を打つのですからその量は大変なものです。まだまだ未完成ですが、どうぞ味わってください。

金胡麻
 つけ汁には味と香りが良いとされる金胡麻を多量に使っています。これまでは市販の胡麻を使用してきました。ある時、家庭菜園で金胡麻を数株を栽培しましたところ、数倍の香りとこくに驚きました。これに味を占め、翌年には一畝総てに種を蒔き大量栽培を目論みましたが思うように発芽しません。さらに発芽しても虫害が酷く、散々な結果に終わりました。この失敗を教訓に再挑戦し、漸く今回は分量の金胡麻が確保出来た次第です。自家製「金胡麻」の味と香りを楽しんで下さい。





2008.12.18