雲で地震を予知する私の考え方について
鍵田忠三郎
序
1982年(昭和57年)は、179年振りの、太陽に向って地球を含む九つの惑星が、一列縦隊をなすと云う、九星連珠の年であるし、月食4回、日食3回と云う65年振りに、日・月食の多い年である。この事により引力変化の多いと予想される、この年は、地球上に於ては、天災地変の多い年であることは想像できる。1月10日朝には先づ第一回目の皆既月食があった。直ぐ11日には、既にルソン島に放て、M7.3という大きな地震が起っているし、ヨーロッパ・東欧は数十年来と云う寒波に襲われ、これは、ソビエトロシアの大きな飢饉、徹底的な食料不足につながるであろう。北アメリカ大陸に於て史上空前の寒波襲来と報ぜられ、シカゴも-32℃を記録したとか、年頭早々より、かかる世界的な気象異変に襲われ、日本列島に於ても本年は、地震多発の考えられるとき、私の提唱する、雲の色と形の異状によって、地震を予知する、いわゆる「地震雲」の考え方によって、地震災害より救われてもらわねばならない。
既に私は、『これが地震雲だ』を1980年8月に出版することによって、雲によって地震を予知する方法は説いた。(中国に於ても翻訳出版され、版を重ねているという。)続いて、九州大学の眞鍋大覺先生は、『大地の雲映』 (1981年12月)を出版された。そしてその雲と地震の関係を理論的に説かれた、その中に私は雲により何故、地震予知ができるのであるかの一文を掲載したのであるが、それをここに少しく手を入れてわかり易い小冊子として出したいと思う。
私は何故、雲の形と色によって、地震予知ができるのであるかを、この際、再び明らかにせねばならないと考える。空をみて自ら地震を予知し、自ら災害よりのがれてもらわねばならない時が近づいている。
昭和57年1月15日記
雲で地震を予知する私の考え方について
1 地球をとりまく大気圏も地球の一部分であるという考え方から先づ出発する。
人間は地表に生息しているので地球とは足の下にあり、地殻と、マントルと、核だけの直径12,750キロメートルの球体だけが地球であると思い人間はその表面上に生息していると思いがちだが、それは違うのであって、人間は海底を這う魚の如く地球の大気圏の底で地球の一部分として一気圧の重さに耐えて生息しているのである。1気圧とは10米の水圧の底で生きているのと同じである。われわれが宇宙船等で地球を離れて地球を見るとき、球体をとり巻く大気圏も地球の一部であるということがよくわかる。
その大地球は自らも発電する電磁石の球体であり、一切が電磁気の法則のなかにある。
勿論他の天体太陽月其の他遊星とは引力の調和を保ちお互いに安定しているわけである。先づ私はこの大気圏も、地球を大きく包んでいるが地球の一部分であり地球は大きな電磁石の球体であるとの考え方に立って雲のことを考えてみることにする。
2 地球の内部の状態は人間には見えないが、雲等大気圏の諸現象をみることによって地球内部の動きをつまびらかに知ることが出来ると思う。
今迄雲の形について研究した人はあったが、雲の形は何故できるのであるかを研究した人はなかった。
私は雲は地中の電磁気の変化により形づくられるものであると考えてみた。これはガラスの上に微細の鉄粉を置いて、ガラスの下から磁石を動かすの理である。
地中の電磁気の変化は直ちに感電し易い水蒸気の魂りである雲に伝る。私は永年雲を見ているうちに雲の変化により地震の起るのがわかるものだからその経験を生かせて、反対に雲の変化の大部分は、地中の電磁気の変化の影響下にあることに考えついたのである。
地中の歪のエネルギーの異状なる蓄積と、急激なる放出が、地震の原因であることはよく知られているところであるが、その地中の異状のエネルギーの発生を、われわれはわからず視る方法もなかったのであるが、それは簡単に上空の雲を見ることによって可能と考えるのである。そして地表浅いところの異状は、低空の雲として現れ、深いところのものは高空に現われるものと考えられる。
大体地中10キロノートルは、上空千メートル、地中50キロメートルは約五千メートルの上空に、異状雲として現われるものと考えれはよいと思う。
地球をとりまく大気には何重もの層があり、その層に地中より発射される電磁気が当り、水蒸気に感電し滞空し雲の形を作るものであろう。だから異状な雲が同じ形を保ち長時間同じ場所の高空、風の強いところに滞空することは、余程強い力が地中より働いていると考えるべきであり、地中の異状の電磁気も長く続いて蓄積されていると考えられこれが地震エネルギーとして放出されるわけです。
晴天で一点の雲なしは、地中も調和を保ち、異状なしの状態であり、又如何に雲量多く、異状なる如く見えるも、力の強い雲が、多数不整に存在する時は、お互いの力が相殺し合って、かえって調和の状態を保ち地震も起らぬものと考えられる。晴天に雲一点、雲一線が異状であり恐ろしいのである。
3 雨も地震も、同じ原因と考られる。
「雨は地面が、呼ばないと降らないのだ、じつと地面が湿って雲を呼ぶと、雨は降るのだ、」と、古老は言っている。大雨の時は特にそうであるが、地下水位が上昇し家の床のシックイとか、深く根を下ろした岩石等は、じつと濡れてくる。大洪水の時には地中の水分が上昇し地面より水が湧出してくるものだ。
雨も地震も雷も同じく電磁場の段差不調和を調和させる動作である。雨の時も地震の起る前も水位が上り地温も気温も上るものだ。
地震の時は、地中深くからの水位と地温の上昇だと考えられるが、雨の時は地中浅いところからと考えられる。雨雲は低い空に現われるが、地震雲は高空に現われる。同じような形の自帯状の雲が現われても低空の場合は、雨の前兆現象であり、高空の場合は地震の前兆現象である。
雨の前の蒸し暑さも、地震に於ても、同じである。晴天が続いて雨降りそうで雨降らぬ、電磁場の不調和の時。地震が起り大地、大気、ともに、揺れると、雨が降るものであり、地中浅いところの小さな不調和、小さな歪みは雨が降っても雷が起こっても調和をとり戻すことができるが、大きな不調和、深い歪を、なおすのは地震である。
地震も雨もともに地中の不調和をなおす自然現象である。
4 地震は地球の病気である。
人間の病気と地震はよく似ている。
人間の身体は地球の一部分であり電気体である。体内の(+)と(-)の電気の調和が健康の絶対条件であり、身体の酸性とアルカリ性との調和、交感神経の調和が保てると健康体であり、身体の陽と陰の電気の、歪不調和が病気であると思う。
病気は字の如く気の不調和でありその歪、不調和を自癒すべく発熱し、発汗し、クシャミ等起して、調和をとり戻し、健康になるものなのである。地震に紛ても地中に歪不調和ができると、地温が異状に高くなり人間の発汗の如く、雨が降りクシャミ(地震)を起してのち安定調和をとり戻すのである。
その際病気とか地震が恐ろしいのではなくて人間の不調和不自然生活が恐ろしいのである。不自然を自然にとり戻すのが病気であり地震であると考えるべきである。
私は田園防災都市の建設を説く、不自然な地下街、高層ビル、無窓ビル、ガス、電気、水道、の地下配線等の人間社会生活が、地震の破壊に対して、恐ろしいのであって、土と共に生きる田園生活をする者にとって地震は左程に恐ろしいものではない0地震は防ぎ得ないが地震災害は自然なる生活をすることによって防ぎ得るものであることを銘記すべきである。
病気に於ても肉ばかり食べ偏食し過ぎるとか夜ふかしをするとか煙草を吸うとかの不摂生が病気のもとであり、身体を亡ばしてしまう恐ろしいものである。病気それ自体は発熱、発汗等によりその不調和を調和せしむる、治す動作であり、恐ろしいものではない。
死と病気とは自ら異るものである。 地震は地球の病気である。大空は地震の顛であり、病気は顛色に直ぐ現われて顔色を見て病気を判断するのと同じように、地震内部の病気は大空の雲ゆきという顔色を見て、すべて解るものなのであり私はその異状な雲の形と色をみて地中の異変を判断し地震を予知するのです。
5 雲はうそを云わない、雲は正直である。
一定の異状な雲は地震を予め教えてくれる。
人間は慾心があるから、うそを云うかも知れないが、雲は無心だから絶対うそを云わないのである。
地中の電磁気の流れが、大気中に正直に感応して雲を形づくる。
地中に地震エネルギーの蓄積があり、地中に異状が起これば、直にそれは電磁波となって、雲に伝えるのである。そして地中の異状な電磁気の流れと同じ形の雲を作るものと考えられる。私は地中にも雲の流れと同じような電磁気の流れがあると考える。雲は地中にもあるわけだ。雨雲も雷雲も地震雲も地中にその原因はあるわけだ。
そうして、地中雲と空中の雲が相互に感応し合っているわけだ。だから空中の雲の異状をみれば地中の異状がはっきり見えるものと考える。自然現象にうそはないし、電気の法則は、一定である。直下型の地震等は、確実に地中の電磁気によって形つくられる異状な雲によって間違いなく適確に予知できるのである。
6 南極に地震は起らない(磁場の歪が地震の原因である。)
南極大陸に地震が起らないことは知られているが、これは氷が2000米も積っているので、これが緩衝帯となって地震は起らないのだという説をなす人があるが左様ではない。私は電磁場の一定なる南極大陸には地震は起らぬのであると思う。
私は磁場の不一定が地震の原因であると思う。巨大なエネルギーが永年に亘り蓄積されて、急激に放出される時に大地震が起るとの説もあるが、私は地中のエネルギーの状態を写す雲の長年の観測からそんなことはあり得ないことであると思う。若し長い間に巨大なエネルギーを蓄積されているのであれば、それを正確に雲はわれわれに伝えてくれるのであるが、左様なことはない。せいぜい2、3日の間に巨大なエネルギーが集るのである。
地震の巨大なエネルギーは急激に何等かの理由によって、蓄積され急に放出されるものであると思う。
さすればこの巨大な瞬間的に力を発揮するエネルギーは何かということになるが、M8.4というような大きな地震のカは余り大きすぎて地球を支えている大きなカ、引力、重力の変化より外に考えられないと思う。
地球の中でも電磁気の歪の起りやすいところと起り難いところがあるのであろう。
環太平洋地帯とか、地中海、シルクロードの地域は地中の電磁波の歪の起り易いところ、南極は起り難いところであると思う。地震は、電磁体でありこれの歪、外的な引力の段差等が地震の原因と考えられる。
7 地黒雲とは
地震雲と名付けたのは私であるが、30年来何とはなしに雲と地震との因果関係を調べてきて、一定の異状な長細い普段見かけない雲が晴天に横たわると、きまって2日以内に地震が起ることを知り、地中の異状な地震エネルギーが雲に強く感応して、このような蛇状とか糸状の雲の形を作るのだな、地中にも同じく大きな直線の断層状の磁場ができて地震が起るのだなと考え、この細長く棚引く雲を地震雲と名付け地震の前兆現象の一つとしたわけだ。
関東大震災の直前に磁石が磁力を失ったという説もあるが、あり得ることと思う。又地震直前に塀等が音もなく倒れたことも報告されているが、それは一時的な無重力のせいであると思う。
三河大地震の時に潮の干満がなくなったという。地震の前に地表に静電気の多量なる発生、地震の前の光り物、と発光現象、地震の最中の発光等も、電磁場の段差に急激に流れる磁気のエネルギーが、地震の原因とすれば、すべて説明できることである。
遠近でも異なるが、福井の大地震の前にも出現した異状なる、大空を真二つに切るに似た灰黒色のまじる、地震雲は、異様な恐ろしい力を感ぜられ未だに私の眼底に焼き付けられて忘れられないし、中国唐山大地震の前日に九州眞鍋先生のもとで撮影された空の断層のような地震雲も、異様な力強さを感ぜさせられた。
関東大地震の2日前、岡山で、空をみて、恐ろしさに、泣き出し、泣き止まなかった、子供のあったことをその本人から聞いた。
異様な恐ろしい雲が地震の前には必ず出現するのである。
今や私は細長い自帯状の雲だけを地震雲と云わない。
夜空、月明に雲魂が異様に並び、他に雲がなければ、やはりその雲魂も地震雲でありましょうし、棒状の雲も鎌状の雲もそれが一つ独立して出るものであれば前兆雲でありましょう。
次に地震の前兆と考えられる雲の形と空の色について顕著なものを書いておきます。
拙著『これが地震雲だ』の「あなたも地震雲で予知できる。」の続き。
8 地霊の起る前に出る雲等の異状現象
(1) 青空に自帯状蛇の如き長い雲が出るこれは地震の前兆であり、だいたい2日以内に地震が起る、高空に出る時は地震の前兆であり、低空の時は雨の前兆、滞空時間の長い時は近くで起り(直下型)、時間が短い時は速くで起る。=例 閑東大地震、三河地震、福井、新潟地震ほか多数。
(2) a 青空に赤く染った雲が一つ浮ぷ。
(前日)例 二上山地震
b 青空に一つ赤い雲が浮び動かない。
(前日)御嶽山噴火
C 直前異様な赤、黒い異様な雲がおおう。
(直前)関東大震災 伊豆大島近海等。
d 新潟大地震の直前、長野に紫に輝く雲が出る。
(3) a 空が赤く染る。例 伊豆東方沖、伊豆大島近海等、(四周、全天、局部)例 多数。
b 赤い光線が上空に向い直立する。青森東M6.6地震
(4) 虫喰い太陽
a 雲に穴があいて太陽が三つ四つに見える。
b 雲が異状に滞電して太陽の光りを受けて異様に輝き太陽が二つ、三つに見える。例 関東大地震等
(5) 薄雲が割れて断層状の黒い一線の谷底のような雲が長くできる。
例=唐山、福井地震等大地震。
(6) 鋭角の虹が出て足が地についているときと、地を這うが如き低角の虹が出て、足が地についている時は噴火地震の前兆です。
例=和歌山南部地震ほか。阿蘇山噴火、等。
(7) 無雲の雨、(天泣)=地震と噴火の前兆。
例 有珠山、阿蘇山、桜島噴火。
(8) 信号灯の赤色の如く燃え上るような朝焼夕焼ともに、地震発生12時間以内という危険信号。信号灯の、だいだい色の如く、山頂が燃える朝焼夕焼は、地震発生の警戒信号。『これが地震雲だ』の表紙、朝焼写真は関東大地震の当日の朝焼にそっくりである。
(9) 夕焼けも同じ、乱れて血の如く赤いのは地震の前兆である。
(10) 青空に力強い雲塊ならぶとき。地震の直前兆。直下型地震。関東大地震等
以 上
|