宝蔵院流槍術

宝蔵院流槍術
  宝蔵院流高田派槍術 第二十世宗家 鍵田忠兵衛

目次
1 宝蔵院流槍術と私 2 槍と矛 3 槍の種類 4 中世の興福寺 5 宝蔵院覚禅房法印胤栄 6 柳生と宝蔵院
7 武蔵と宝蔵院  8 宝蔵院流槍術の系譜 9 宝蔵院流槍術 奈良への里帰り 10 宝蔵院流槍術の技術 11 宝蔵院流槍術と川路聖謨 12 宝蔵院流高田派槍術の遺跡


3 槍の種類

タウン誌「うぶすな」 2009.3月号 掲載


今号では、槍の種類を紹介します。

素槍(すやり):
通常よく見られる、その名のとおり槍穂が真っ直ぐな槍です。古い時代には素槍しかなく、素槍という呼称はなかったはずです。戦国時代に入って鎌槍や鍵槍が現れ、初めて素槍という呼称が使われるようになりました。

鎌槍(かまやり):
穂に鎌(横刃)の出ている槍です。素槍の槍穂に鎌を附けることによって、掛け切り、攻撃を防ぎ止め、巻落とすなどの利点を加えた槍です。鎌の形や長さ・角度などが様々に工夫され、戦国時代末期になると、鎌槍は武将の持料として脚光を浴び、加藤清正の片鎌槍、片桐且元の手違い十文字、森長可の大十文字などが今日にも伝わっています。また武術としても鎌槍の術が発達しました。はじめは独立の流儀になりませんでしたが、やがて桃山時代に宝蔵院胤栄の十文字鎌の術が一流として成立し、さらに優れた後継者によってますます洗練されました。鎌槍の柄の長さは素槍に比べ短いのが通例です。一つには素槍よりも身が重いこともありますが、それよりも鎌を利して敵の手元に入りやすく、また引落とす、巻落とす等の操作のためにある程度短い方が使いやすいのです。

十文字槍(じゅうもんじやり):
鎌槍の一種で、穂の両側に等長の鎌が附く槍を両鎌槍といい、槍穂が十文字型のためこの名が付いています。私共の宝蔵院流が使用する槍はこの槍です。突くばかりでなく、切り落とす、巻き落とす、摺り込む、など多用に使えます。

片鎌槍:
これも鎌槍の一種で、十文字槍の片鎌がない槍です。

鍵槍(かぎやり):
槍にカギと呼ばれる金具を固着し、これで敵の武器を押さえ、掛け落とすなどが出来るように作られた槍です。このカギ金具の多くが鈎(かぎ:L)形をしているのでこのように呼ばれています。

管槍(くだやり):
素槍の柄に一握りほどの長さの緩い管を通した槍です。その管を左手で握り、右手で槍柄を執って突き引きをすれば、槍は抵抗の少ない管の中を走り、軽快に使用できます。中国にも西洋にも管槍は見当たらず、日本独自の槍ということが出来ます。

大身槍(おおみやり):
際立って長い身(槍穂)を附けた槍をいいます。拵え(こしらえ)によって素槍も鎌槍もあります。槍は通常、四五寸から六七寸(12〜21p)もあれば突刺には充分とされました。ところが一尺、二尺、希には四尺(30〜120p)以上にも及ぶ槍があり、これを大身槍といいます。

長柄槍:
文字通り長い柄の槍をいいますが、長柄槍は単に長槍ではなく、槍足軽など歩卒に持たせ、集団の力で戦闘をさせるための特に長い槍を指します。特徴は普通の槍より長い、主家が用意し槍組の卒に配り持たせる揃いの槍、そして集団組織の指揮の下に使用する槍です。長柄槍は二間半から三間半(4.5〜6.4b)程度の長さがありました。戦乱の世では集団の戦術としては相当の効果がありました。江戸時代に入って平和になっても儀仗としても使用されました。長柄の槍がずらりと並ぶと壮観だったでしょうね。







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