宝蔵院流槍術 福井県で宝蔵院流槍術体験入門 月刊「武道」 2011年5月号 宝蔵院流高田派槍術 宗家代行 一箭順三 |
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模範演武を披露 |
平成23年2月11日、福井県フェニックスプラザ(福井市)において宝蔵院流槍術の演武及び地元小学生達への体験教室が開催された。 昨年末、福井県教育委員会から、子ども達に宝蔵院流槍術の観覧と、できれば体験もさせたいとの打診を受けた。福井県小・中学生の体力・学力日本一の報道が記憶に新しかったが、青少年のためにこのような配慮がなされているのかと感じ入った。 ご承知の通り、流祖・宝蔵院胤栄は奈良・興福寺の僧で、約450年前、境内の猿沢池に浮かぶ三日月を突き鎌(十文字)槍を工夫し、宝蔵院流槍術を創めたと伝えられる。そして流儀二代胤舜から、高弟中村市右衛門尚政にその正統が伝えられた。尚政は後に越前(福井)藩に仕官し知行千石を賜っている。尚政からその妙術を承継したのが私共高田派の祖・高田又兵衛吉次である。 江戸時代の福井県は、越前藩をはじめ大野藩、小浜藩、そして江戸藩邸においても宝蔵院流槍術の稽古がなされていた。さらに福井県大野市出身の元最高裁判所長官で全日本剣道連盟会長であった故石田和外先生は十八世を継承されており、小生も現第二十世宗家鍵田忠兵衛とともに故石田先生の内弟子となり直接手ほどきを受けるなど、福井県と宝蔵院流槍術はたいへんご縁が深い。 福井県剣道連盟は毎年、小・中・高校生の為に一流の剣道師範を招き「世界一剣道教室」と銘打って講話と講習会が実施し、4回目を迎える。今回は福井県出身で東京大学剣道部監督・小林知洋先生の講演と実技指導、これに宝蔵院流槍術演武と体験を加えて開催された。 宝蔵院流槍術を小学生にも理解して頂けるようプロジェクターを使用して、映像によって歴史や技術を説明し、次いで宝蔵院流高田派槍合せの型を粕井隆免許皆伝と披露した。観客も真剣に観覧頂き、張り詰めた空気と緊張感のなかで気持ちよく演武することができた。 演武後、司会者から体験希望者は舞台へ、との案内にたちまち13人の小学生が舞台に駆け上がり、奈良から持参した槍を順番に受け取って整列。ニコニコしながら背丈の3倍以上もの槍を携えて客席に礼をする姿は微笑ましかった。宝蔵院の槍は素槍が3.6b、鎌槍が2.7b、それぞれ3s以上もある。はじめに「構え」を指導した。長くて重いはずなのに頑張って槍を握り、子ども達の前で槍を構えて歩いて見せると、それを見習ってすぐに「歩み足」ができる。続いて「突き」。客席に向かって「エイ」と大声で一斉に槍を突く姿は実に壮観であった。基本技術の一つ「引落し」も難なく体験してくれた。 目を輝かせ楽しげに体験してくれた子ども達には、ご先祖に宝蔵院流の師範も居られたのではないかと思うほどに親近感を感じた。これを機会に、福井県と宝蔵院流槍術の交流が深まり、あの子ども達が宝蔵院流を習いたいと言い出してくれないかと密かに願っている。 |
子どもたちの体験入門 |
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平成22年度 福井県「世界一剣道教室」(11.02.11) |
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2011. 4.28