宝蔵院流槍術in代官山

大和戦国武将列伝
    − 宝蔵院流槍術 in 代官山 −


月刊「武道」 2008年11月号

宝蔵院流高田派槍術
第二十世宗家 鍵田忠兵衛


 宝蔵院流槍術は、東京の奈良県代官山iスタジオが主催する「大和戦国武将列伝」開催(6月14日〜22日)に呼応し、6月15日、「宝蔵院流槍術in代官山」として紹介事業を展開した。

 講演中の筆者
 会場の代官山iスタジオは、奈良県宿泊所「渋谷寮」として長年利用されてきたが、数年前に展示・講演会場としてリニューアル・オープンした。東急東横線代官山駅前に立地し、現在では東京における奈良県文化の発信基地として活用されている。
 当日は好天も幸いして開会の午後1時前には会場となるiスタジオ中庭は既に人であふれていた。まず本日の演武者、宗家代行・一箭順三、免許皆伝・榎浪伸和、免許・若林幹男、美馬博幸、土屋明洋、目録・前田健太郎、西本昌永ら7名を紹介し、彼らによって構えや基本技術を説明の後、宝蔵院流高田派槍合せの型を披露する。観覧者は、平素観ることの出来ない槍捌きを熱心に見学し、さかんにカメラやビデオで撮っていた。
 引き続き観覧者に一日体験入門を実施し、実際に槍を持っていただいた。観覧者は始めて握る槍の重さと長さに驚き、伝習者に支えられながらも頑張って槍を突こうとする子どもや、先ほど観た演武を真似て「引落し」「巻落し」を試す人達などで、中庭は賑やかな声に包まれた。
 続いてホールに戻り、私が武具や槍、宝蔵院流槍術の歴史や思想などを1時間にわたり講演した。会場は椅子が足りなくなるほどの盛況で、熱心にメモを取る人もいて、奈良が発祥の武道の奥深さについて大いに理解を深めて頂いたことと思う。
 講演が終わると次は宝蔵院流槍術・狸汁の振舞いである。狸汁は流祖・胤栄師より歴代、正月の稽古始に伝習者に振舞われていた伝統料理で、歯ごたえが似ているを狸肉に見たてた精進料理である。
 前夜から会場入りした伝習者達が早朝4時より仕込みを始め、この頃になると蒟蒻にまでしっかり出汁と味噌が煮含められている。大鍋3杯400人分の狸汁を準備したが、子どもや若い女性にまで御代わりを所望され、1時間足らずで底をついた。
 私共は、関西や名古屋を中心に稽古・活動をしてきた。これまで日本武道館で演武することがあったが、東京においてこれほどに宝蔵院流槍術をご存じの人、興味・関心を持って下さる人の多いことに驚いた。かつて、高田派祖・高田又兵衛とその子孫は代々小倉藩に仕え、その高弟森平政綱ら三名が江戸に出て槍法を広め、日本最大の流派へと発展した。こうしたご縁の地、東京において再び宝蔵院流槍術の稽古が広まることを願っている。


宝蔵院流槍術 in 代官山 : 平成20(2008)年6月15日(日) 

2008.10.31