遊悠タイム
古武道・槍術に一日入門


ならリビング
平成9(1997)年9月12日 掲載
体験入門 小幡直子 記者


流れるような動きが、要所要所でピタリと決まる模範演技
遊悠タイム
奈良が古里の鎌槍で 見事な型と技の連続


古武道・槍術に一日入門
 興福寺の僧・覚禅房法印胤栄(1521−1607年)を流祖とする宝蔵院流槍(そう)術(第20代宗家・鍵田忠兵衛氏)。胤栄は、猿沢池に映る三日月を突き、独自の槍術を編み出したとか。宮本武蔵の小説や映画にも登場する、伝統ある古武道に一日入門してみました。
小幡直子

2.7メートルもの長さに足元ふらついて
 奈良市中央武道場(奈良市法蓮町)の高い天井に樫製の稽古槍(けいこやり)が触れ合う音が響きます。「特に難しい作法はありませんが、決して槍をまたがないように」と一箭順三さん(48歳、免許皆伝)。うーん、なんだか神聖な感じです。
 この流派の一番の特徴は、十文字鎌槍(かまやり)とも言われる槍の形。十文字になった穂先が、それまで”突き”専門だった槍を立体的に使える武器にしました(ただし現在は、金属製の槍で相手と向き合うことはない、とのこと)。
 さて、稽古の最初は基本のかまえ。足を少し広めに開き、ひざを割って重心を下げていきます。「おっ、なかなか」と心の中で自画自賛。でも、調子良くいったのは、ここまでだったのです。
 次に、槍を頭上に振りかぶり、相手の槍を鎌部分に引っかけて払い落とす「巻き落とし」に
挑戦。稽古槍の重さは2キロ、と言うと大したことないように聞こえますが、問題は長さ2.7メートルのの方。両手をバンザイして振りかぶるだけでフラフラフラー。
 でも、一気に両手を振り降ろしながら、相手の槍を払うのは、かなりのそう快感。自分の力で、ピシ″と決めてみたい、という気になってきます。

基礎の「しごき」 難しい突く動作
 そのためには基礎が大切、というわけで、次なる課題は、剣道などの素振りに当たる「しごき」。右手の中指、薬指、小指に力を入れ、左手に当たる位置まで一気に突くのですが、これがとっても難しい。
 「もう少し、軽い槍を持ってきましょう」。見かねた一箭さんが探してきてくれたのは、竹ボウキの柄くらいの太さの槍(重さ約900グラム)。「これじゃないと出来ないとは・・・」。ちょっと情けない気分になりましたが、気を取り直して再挑戦!今度は何とか、なんとか、なんとかー形になったカナ?
 悪戦苦闘を続けているうちに本日の稽古も大詰め。一箭ざんと前田繁則さん(48歳、免許皆伝)の模範演技です。この日は、宝蔵院流高田派槍合わせの型 (表14本、裏14本と新仕掛7本の計35本)のうちの新仕掛7本。
 見事な技の連続は素人目にも、とても美しく感じます。
  「ほかの武道では経験しない動きぱかりなので、初心者でも大丈夫」 (一箭さん)とのこと。武道の美学に興味を持った読者の皆さん、いざ、槍にチャレンジ!

メモ 
 明治の廃仏毀釈のあおりを受け(宝蔵院は興福寺の子院の一つ)、奈良では一時途絶えた同槍術だが昭和51年、当時の奈良市長・鍵田忠三郎氏の熱意により里帰りを果たす。現在、約40人の伝習生が毎週土曜日12時-14時に稽古。27日に、興福寺東金堂で恒例の奉納演武会(第7回)も開催予定。

ここまでは、なんとかサマになった「基本のかまえ」

技を決める(?)と、反動のため、上体がみっともなく前かがみに
































2015. 9.21