八重も学んだ?平和の槍
宝蔵院流 奈良発祥古武術 脚光

平成25(2013)年4月1日(月)
毎日新聞 大阪本社版(夕刊)



けいこ用十文字鎌槍を手にする一箭順三さん。実物は横に突き出た十字の部分が三日月型の鎌になっている=奈良市の中央武道場で、鶴見泰寿撮影
 幕末の福島・会津を舞台とするNHK大河ドラマ「八重の桜」に、奈良発祥の古武術「宝蔵院流槍術」が登場する。
 安土桃山時代の興福寺(奈良市)の僧・胤栄(いんえい)が創始した槍術で現在も奈良市などで道場が開かれている。同術高田派を継承する第21世宗家の一箭順三さん(64)は「相手を殺さずにいさかいを収める専守防衛の理念が根付いた槍術」と語り、「大河ドラマをきっかけに、平和的な思想が宿った槍術を多くの人に知ってほしい」と話している。

 宝蔵院流槍術は主人公八重が生まれた会津藩に伝わっていた。その平和的思想は、同槍術で使われる、先端が十文字状の十文字鎌槍(長さ2.7メートル、重さ約2キロ)が体現している。一箭さんは「通常の槍とは異なり、相手の槍を先端の十文字鎌で受け止めることができる。攻撃も殺すのではなく、三日月形の鎌で相手の手首を傷つけるなどし、戦う気力を無くす」と説明する。

 また、創始者である胤栄は、柳生新陰流の生みの親、柳生石舟斎とともに修行したことで知られている。

 一箭さんが顧問を務める「奈良宝蔵院流槍術保存会」は毎週土曜日、奈良市の中央武道場で、一般に参加を募りけいこをしている。ドラマの影響で問い合わせもあるという。

 けいこを始めて14年という公務員、藤本大輔さん(44)=奈良県天理市=は「『相手に対して思いやりの気持ちを持ってけいこせよ』と指導されている。向かい合っても、にらむのではなく目は笑ったように力を抜くという『大悦眼(だいえつげん)』という考えが宝蔵院流にはある」とその魅力を話す。

 奈良市の道場に入門できるのは男性のみで、高校生以上が対象。会費は3カ月で6000円。大阪や名古屋にも道場がある。問い合わせは同保存会事務局(0742・44・9124)
【鶴見泰寿】






毎日新聞           2013. 4. 1

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