春日大社での宗家就任報告式
宝蔵院流高田派槍術

月刊「武道」 平成24(2012)年9月号



 一箭順三宗家(前列中央)をはじめとする伝習者総員

 6月9日(土)、「宝蔵院流高田派槍術(ほうぞういんりゅうたかだはそうじゅつ)第二十一世宗家就任報告春日大社正式参拝並びに演武奉納の儀」が厳(おごそ)かに執り行われた。
 宝蔵院は春日社と縁深い興福寺子院であり、春日社御祭神は武神・武甕槌命(たけみかづちのみこと)をはじめ四柱神がお祀(まつ)りされている。こうした御縁から宗家就任報告式が行われることになった。
 一箭宗家はじめ伝習者総員が白の稽古着、袴に身を包み、隊列を組んで本殿に向かう。厳かな空気が流れるなか祝詞(のりと)が奏上された。続いて一箭宗家、松岡泰夫奈良宝蔵院流槍術保存会会長、先代宗家奥様の鍵田美智子様が玉串を奉げ、宗家就任を報告し、宝蔵院流高田派槍術の隆盛を祈念し、宗家に合わせて総員が心一つに柏手(かしわで)を打つと心洗われたような清々しい気持ちになった。
 続いて、御本殿前の「林檎の庭」で松岡会長、伝習者総員が見守る中、鎌槍:一箭宗家、素槍:前田繁則免許皆伝による宝蔵院高田派槍合せの型「表」七本の演武が奉納された。この日は梅雨入りの生憎(あいにく)の天候であったが、神のご加護か不思議と雨は止(や)み、雲間から薄日が差し始めた。
 一本目「到用」から七本目「巻槍」までの演武が繰り広げられ、多くの参拝者は足を止め息をのみ、「林檎の庭」は時間が止まっているかに感じた。
 奉納演武終了後、再び行列して春日若宮を参拝した。春日若宮との御縁は、平成3年以来「春日若宮・おん祭」に毎年出仕し、「影向(ようごう)の松」前において演武を奉納している。こうして、一箭宗家の宗家就任報告式が滞りなく終了した。
 昨年12月16日、先代の鍵田忠兵衛(かぎたちゅうべえ)宗家が54歳という若さで急逝され、伝習者一同は悲嘆の涙にくれた。痛恨の極みの中、本年1月7日に一箭宗家が第二十一世に就任され、前宗家の遺志を継ぎ、新宗家指導のもと稽古に邁進してきた。そしてこの度、ご逝去百箇日を経たことから日を選び就任報告式となった次第。
 直会(なおらい)において、一箭宗家は鍵田宗家の想い出を語り、改めて稽古に精進すると共に宝蔵院流高田派槍術の隆盛を誓われた。私共伝習者は、新宗家を中心に宝蔵院流高田派槍術の礎になるよう弛(たゆ)まぬ努力を行い、先師の心と技を後世に伝えて参る決意を新たにした。
 最後にこの素晴らしい宗家就任報告式に立ち会えたことに感謝したい。

 (宝蔵院流高田派槍術 目録 西本昌永)

 ご本殿前「林檎の庭」で奉納演武する一箭宗家
























2012. 8.29