一日体験入門






宝蔵院流槍術
修学旅行生一日体験入門

月刊「武道」 2006年7月号

宝蔵院流高田派槍術
第二十世宗家 鍵田忠兵衛




 522日、宝蔵院流高田派槍術は、修学旅行生(千葉県船橋市立葛飾中学校3年生)3人の申し出を受け入れ「槍術一日体験入門」を行った。


はじめは見取稽古から
(左が一箭順三 宗家代行)

 葛飾中学校は、総合的な学習の取り組みとして「わたしの生き方と出会う〜京都・奈良の人との出会いを通して」という学年テーマのもと、生徒各自が35人のグループを編成してテーマを考え、訪問先を自分たちで探して話を聞き、体験をし、最後には一人ひとりが「生き方宣言」として学習のまとめをする、修学旅行を実施している。
 宇野祐太、劔持俊介、大野真史君の3人は相談して、日頃から興味を持っていた、奈良に本拠を置く宝蔵院流高田派槍術を訪問先と定め、彼らは「日本古来の武術のひとつである""について学び、そこから"和の心"を知り、世界に誇れる日本人として恥ずかしくない生き方を見つけよう」をテーマに体験入門し、「槍術の文化と槍術での心得や槍術に取り組む時の和の心を稽古を通して教えていただきたい」と希望し、自分たちで電話依頼してきた。
 宝蔵院流高田派槍術としても彼らの熱意を受け入れ、稽古で得た体験などを語り、稽古指導を通じて奈良発祥の大切な文化でもあるこの槍術をお伝えし、中学生達が何かを感じて奈良から持ち帰って頂ければ幸いであると考え、受け入れた。
 彼らは宝蔵院流高田派槍術について、書籍やインターネットを通じて事前学習を行い、レジメにまとめ、事前に郵送してきた。 
 京都で修学旅行生たちはグループ毎に解散し、彼ら3人は電車・バスを乗り継いで奈良までやって来て、そして道場に入ると正座し、しっかりとした口調で挨拶のうえ、入門依頼の趣旨を説明し、当方はこれを快く受け入れた。早速、礼儀作法の指導を受け、歴史及び槍術概要説明、模範演武見学、続いて、いよいよ素槍(3.6b)や鎌槍(2.7b)を握り、構えや突き、そして基本の「しごき」や「引落(ひきおとし)」「巻落(まきおとし)」、さらに「型」の稽古をし、重くて長い槍に手こずり、手に豆を作りながらも懸命に稽古をしてくれた。
 稽古後、伝習者に案内されて宝蔵院流槍術発祥の興福寺、宝蔵院跡に建つ顕彰碑、流祖・胤栄の守り本尊「摩利支天石」、さらに宝蔵院歴代が眠る宝蔵院墓地を参拝ののち、先生方や仲間の待つ大阪の宿へと帰って行った。
 今回の修学旅行帰校後に記される「生き方宣言」を彼らによってどのようにまとめられるのか、楽しみである。

記念撮影


生徒の感想文



一人稽古に励む宇野君

宇野祐太
 体験の中で感じたことは、道場で槍を握ると雑念が払えるということです。暑い道場の中で汗をかきながら槍を振ると、それだけに集中できました。これは。終わったあとでとても気持ちいいことだと思いました。一日体験だけでは、武道についてなにもわかりませんが、今自分が行っているサッカ−と今日共通するものがあるように感じました。それが何かはまだわかりませんが、また機会があれば是非やりたいと思いました。


榎浪伸和免許皆伝に指導を受ける劔持君

劔持俊介
 武道場に入って、言い表しがたい「すごさ」を感じました。すごさを肌で感じながら、歴史及び槍術の説明を受けました。その後、実際に槍を持って稽古を受けました。しかし、槍は予想以上に重く、扱うのに苦労をしました。稽古を受けていくうちに、槍の重さにも慣れ、槍術を楽しいと思う自分がいました。短い間でも、槍を行って得たこと、己を磨くこと、相手の心を思うやさしさ。このことは今からでも行えることなので、積極的に行い、この体験で得たことを大切にしていきたいと思います。


美馬博幸免許に指導を受ける大野君

大野真史
 僕が一番はじめに思ったのは、“礼儀”の大切さです。宝蔵院流槍術は礼に始まり礼に終わると教えて頂きました。この古(いにしえ)の時代から大事に伝えられてきた姿勢は、武道だけではなく日常生活でも大切だと思いました。ですが、最近日本人は、この姿勢を忘れかけていると思います。だから、これから自分自身でも礼儀を大切にし、外見だけでなく心の中から行動できるようにして、周りに広めていきたいです。




修学旅行生「一日体験入門」(06.05.22)

2006.06.25