柳生での宝蔵院流槍術演武・体験交流会 月刊「秘伝」 2004.1.1号 |
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気迫あふれる演武に感嘆の声があがった。 右/若林幹雄。左/長田眞男 体験コーナーにて。 初めて手にする槍は思いのほか長く、重い! |
柳生での宝蔵院流槍術 演武・体験交流会 宝蔵院流高田派槍術 第二十世宗家 鍵田忠兵衛 NHK大河ドラマ「武蔵」の放映を機に、奈良・柳生の里が全国の歴史・武道ファンから注目を集めています。 宝蔵院流槍術は10月19日(日)、旧柳生藩陣屋跡において、槍術演武及び体験交流会を開催しました。 宝蔵院流槍術はおよそ450年前、奈良・興福寺の子院宝蔵院の僧、胤栄によって創始されました。胤栄は柳生但馬守宗厳(石舟斎)と共に上泉伊勢守から刀術を学び、さらに槍の修練に努め、猿沢池に浮かぶ三日月を突き鎌槍を工夫し、ついに宝蔵院流槍術を創めたと伝えられています。 宝蔵院の槍は、通常の素槍に対し鎌槍と称する十文字形の穂先に特徴があります。攻防に優れ画期的な武器として「突けば槍 薙げば薙刀引けば鎌 とにもかくにも外れあらまし」との歌が伝えられ、やがて全国を風靡する最大の槍術流派へと発展しました。現在では80名の伝習者が奈良・大阪・名古屋を中心に稽古に励んでいるところです。 柳生藩陣屋は柳生の里を一望できる見晴らしの良い小高い丘の上にあり、柳生但馬守宗矩によって建設されました。その後、幾多の変遷を経て、現在は陣屋跡史跡公園として整備され、建物跡や井戸は石積によって復元されています。 さてこの日、宝蔵院流槍術の歴史を説明した後、基本技である「引落し」「巻落し」「摺込み」などをスローモーションを交えて説明しました。合理的な技の仕組みで相手の攻撃を止める鎌槍の技術に感嘆の声があがりました。続いて、伝えられている宝蔵院流高田派槍合せの型を披露。観光客は平素見ることのない伝統の槍術を熱心に見入って下さいました。さらに、体験・交流のコーナーには多くの稽古槍を持参し、実際に観客に槍を持っていただきました。始めて持つ槍の長さに驚いたり、重さに耐えかねながらも伝習者に支えられて、先程見た演武の真似をする子ども達など、陣屋跡の会場は終日賑わいました。 晴天の暖かい天候に恵まれたこの日、3回の演武・交流会を実施し、多くの観光客に宝蔵院流槍術の歴史と伝統を体感いただいた一日でした。 私共は今後とも、奈良の大切な文化である宝蔵院流槍術の技と心を後世に確実に伝え広めるために懸命に稽古をし、併せてあらゆる機会を通じて多くの方々に知っていただくよう努力を続けたいと考えております。 |
「武蔵」奈良・柳生ものがたり |