稽古槍柄用材:葉長樫ドングリ採集


稽古槍柄用材:葉長樫(ハナガガシ)ドングリ採集

 宝蔵院流槍術は宮崎県日向市と大分県佐伯市において、稽古槍柄用材となる葉長樫(ハナガガシ)のドングリを採集しました。

採集日  平成25(2013)年11月24日(日)

採集先  福瀬神社(宮崎県日向市東郷町山陰乙201)
      堅田郷八幡宮(大分県佐伯市大字長谷9683-2)

平成25年度ドングリ採集班
 宗家:一箭順三、免許:美馬博幸、目録:佐藤寛・西堀清作・加藤了嗣・米原紀吉
 伝習生:森一彦・森口遙平 : 計 8名

稽古槍材の現状
 古武道伝習者にとって、安定的な武具の調達は喫緊の課題です。
 宝蔵院流槍術は、樫製の稽古槍(鎌槍:2.7m・素槍:3.6m)を使用しています。
 しかし、無節・長尺の樫材調達は容易ではありません。
 槍柄材としての白樫は伐採が進み、国内では既に枯渇しているものと推測されます。

植林計画

 宝蔵院流槍術は、樫の実(ドングリ)を拾って育て、自分たちで植林する構想を発案

樹種の選定
 槍柄材として江戸幕府将軍家に直納されていたのは、優れた堅さと弾力性を持ち、真っ直ぐ20m以上に成長する天草の葉長樫(ハナガガシ)という種類でした。

 「天草の樫」については佐渡奉行(後に勘定奉行として日露和親条約を締結)川路聖謨(かわじとしあきら:奈良奉行でもあった)の日記にも記されています。
天保11(1840)年11月2日:参照)

 江戸時代に風靡した天草ブランドの葉長樫は、現在では福連木(ふくれぎ)国有林(熊本県天草市)に僅かに残るのみとなり、希少種に指定され伐採等は不可

 しかし、大分・宮崎県の鎮守の森にそれぞれ葉長樫巨樹林の存在を確認

育苗
 当面は、福瀬神社(宮崎県日向市)・堅田郷八幡宮(大分県佐伯市)のドングリを継続して採集させていただき、奈良において育苗を続け、2-3年後に奈良市東部地域の山林に定植する予定です。

植林維持管理
 植林は枝払いや下草刈りなど、50年以上にも亙る息の長い作業が必要となります。
 450年以上の歴史を有する宝蔵院流槍術を次世代の伝習者に確実に引き継いでいくためにも、私ども宝蔵院流槍術一門は平素の稽古とともに、稽古槍用材確保のための植林計画を継続し、日本古武道の普及発展に精進してまいります。

福瀬神社


福瀬神社
宮崎県日向市東郷町山陰乙201

社殿前にて

宮崎県指定天然記念物「福瀬神社のハナガガシ林」

世界一の葉長樫(ハナガガシ)
根回り    9m60cm
胸高幹回り 5m30cm
樹高     40m





 第55回全国植樹祭(平成15年:宮崎県西都市)において、天皇陛下がこのハナガガシドングリをお手蒔きされました。

堅田郷八幡宮



堅田郷八幡宮
大分県佐伯市大字長谷9683-2

急傾斜石段の参道

社殿前にて

国指定天然記念物「堅田郷八幡社のハナガガシ林」



月刊「武道」2014.2月号掲載 「50年後の伝習者に託す夢」(ハナガガシ ドングリ採集)

2014. 2. 1
2013.11.27